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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
するともう戦場のような騒ぎで、この寒さに襯衣一枚でもって全身水を浴たように、汗をかきます。それが済むと早速調理です。煮るものは大してありませんが、それぞれのけだものに頃合いの大きさに切ったり、分けて容物に入れたりするのが大変です。肉類の方は、生きている兎だの鶏だのには、冥途ゆきの赤札をぶら下げるだけですが、その外のは必ず頭のある魚を揃えたり馬肉の目方をはかって適当の大きさに截断し、中には必ず骨つきでないといけないものもあって、それを拵えるやら、なかなか忙しくて、おひるの弁当が、キチンと正午にいただけることは殆んど稀で、いつも一時近くですね。その忙しさの間に、園長を掴えてきて、これも料理しスペシァルの御馳走として象や河馬などにやらなきゃならんそうで、いやはや大変な騒ぎですよ」
帆村は、うっかり園丁に象や河馬に人間を食わせる話をしたのが、こんなところへヒョックリ出て来ようとは思いがけなかったので、横を向いて苦笑いをした。兎も角、調餌室の連中はあの時間、犯行を遂げるなどとは非常に困難であることが判った。
してみると、園長の万年筆や釦は、一体何を語っているのだろうか。