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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
あのタンクは、故意か偶然か、人間一匹を隠すには充分な大きさをしているのだった。
そんな結論を生んでゆく裡に、帆村の全身にはだんだんに反抗的な元気が湧き上ってきたのだった。
「須永を呼ぼう」
彼は公衆電話に入って帆村探偵局の須永助手を呼び出すと直ぐに動物園へ来るように命じた。
5
爬虫館の鴨田研究室の裡へツカツカと入って行った帆村探偵は、そこに鴨田氏が背後向きになり、ビーカーに入った茶褐色の液体をパチャパチャ掻き廻しているのを発見した。外には誰も居なかった。
帆村の跫音に気がついたらしく、鴨田は静かにビーカーを振る手をちょっと停めたが、別に背後を振返りもせず、横に身体を動かすと、硬質陶器でこしらえた立派な流し場へ、サッと液体を滾した。すると真白な烟が濛々と立昇った。どうやら強酸性の劇薬らしい。なにをやっているのだろう。
「鴨田さん、またお邪魔に伺いました」帆村はぶっきら棒に云った。
「やあ!」と鴨田は愛想よく首だけ帆村の方へ向いて「まだお話があるのですか」とニヤニヤ笑い乍ら、水道の水でビーカーの底を洗った。
「先刻の御返事をしに参りました」
「先刻の返事とは?」