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ぎゅうにゅうとうま
牛乳と馬
豊島 与志雄
「思索」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,248 字 · 25 页
お咳は少し間遠になったが強くなり、お熱は平均すれば前と同じく七度二三分だが高低が多くなり、お食慾は減ってくるようだった。野島先生も前々から、暖いうち海岸へでもいらした方がよろしかろうと勧めていらしたし、川井の伯父さまから丁度、湘南の或る療養所に室の予約が出来たことを知らせて来た。
お母さまとお姉さまとは、なにか御相談なすっているらしかった。
「でも、来て下さるかしら、わたくしがこんな病気なのに。」
「お招きすれば、きっと来て下さるよ。御一緒に食事をするわけではないのだから。」
「来て下さるとは思いますけれど、お招きして断られたら恥ですもの。」
なんのことかと尋ねてみたら、ここを引き上げる前、お世話になった菊地さん御夫婦といっしょに、小野田さんも、お食事に招きたいという話だった。わたしは呆れた。
「そんなことなら、わたくしが内々お聞きしてみましょう。」
わたしは心と逆なことを言ってしまった。小野田さんはいったい失礼な人だとわたしは思っていたのである。自分勝手によその牛乳を取りに行ったり、わたしの楽しみを奪い取ったり、裏口だけで一度も上にあがらなかったり、物知らずにも程がある。