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ぎゅうにゅうとうま

牛乳と馬

豊島 与志雄

「思索」1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,248 字 · 25 页

青空文庫

乗馬は、颯爽として、男性的で、直情径行で、ひねくれたくよくよしたものを排除する。つまり、真直に駆けぬける。これが大切です。秋子さんも馬に乗りませんか。僕が教えてあげるから。」

怒ってるのでもなさそうだ。わたしは口籠った。

「乗りたいんですけれど……。」

「そんなら、なにも、遠慮することはないでしょう。」

「でも、もう日がないんですもの。」

小野田さんは変な顔をした。

「実は、近いうちに、ここを引き上げることになっています。」

「みなさんで……。」

「ええ。東京に帰ります。」

小野田さんは眼をぱちりとさして、黙りこみ、やがて思い出したように、ブラシでまた馬を洗い始めた。

「そうですか。そんなら、明日にでもゆっくり伺いましょう。」

予期しない結果になった。わたしの初めの心づもりはもう崩れてしまっていた。どうでもよいと思った。わたしはすぐに辞し去った。

翌日の午後二時頃、小野田さんはやって来た、馬には乗らず、黒い背広服に派手な博多織のネクタイをしめ、牛乳の一升瓶を手にさげていた。いつも前回に空瓶を持って帰り、牛乳をつめて届けてくれることになってるのである。

小野田さんが来る前、午前中、ちょっと変なことがあった。