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ぶつりてきくうかんのせいりつまで

物理的空間の成立まで

戸坂 潤

(カントの空間論)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,996 字 · 61 页

青空文庫

それゆえ空間に固有なものを引き去った一般的な「経験の制約」や「原理」の規定に就いて云々してもそれは空間と何の関わる処もない。吾々は空間が何故に経験の制約であり原理であるのかを知らねばならぬ。而もカントの立場に立てばすでに述べたように空間が形式的直観であったればこそ始めてそれを「経験の制約」とも「原理」とも考える理由が出て来るのに外ならない。もし形式的直観ではなくても「経験の制約」と考え得ると云うならばそうすれば空間はカント自身の考えた範疇と少しも異る処はなくなって了う。空間が直観に属することを(譬えそれが範疇への関係なくしては成り立たぬとしても)忘れる時空間は空虚な概念となって了わねばならぬ。カント自身「人間の認識の純粋な要素の研究に於て私は長日月の熟考の後始めて感性の純粋なる要素概念(空間と時間)と悟性のそれとを確実に区別し又引き離すことが出来た」(Prolegomena, § 39)と告白しているように空間を制約と考え原理と考えることとそれを直観に属すると考えることとが引き離せない処に空間の空間たる構成的な特質がなければならぬ。空間を飽くまで形式的直観と解釈出来るならば、これが先験的に平面的であるか或いは先験的に未だそうとは考えられないかということは一応の問題となり得ると思う。