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ぶつりてきくうかんのせいりつまで

物理的空間の成立まで

戸坂 潤

(カントの空間論)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,996 字 · 61 页

青空文庫

二

構想力の順次総合のレーゲルとは構想力が範疇に従うことを意味するに外ならない。即ち形式的直観はその限りに於て範疇的と呼ばれることが出来る。然るに範疇とは人も云うように認識の規範ということに外ならない。形式的直観は規範的でなければならぬ。カントが空間に認めたアプリオリとは実はこの規範性に外ならない。直観空間は規範である。

二

カントの空間をば一応このように解釈出来るとして私は幾何学とこの直観空間との関係を多少立ち入って考えて見たいと思う。カントの識った幾何学は恐らく三次元のユークリッド幾何学であったと想像される。もとより空間の直観そのものがユークリッド的であるか或いは又未だ何等そのような規定を持たぬものであるかということに就いてカントの言葉を聴くことは出来ないであろう。併しカントによればユークリッド幾何学はかかる直観に基くものであり、而もユークリッド幾何学が唯一の幾何学であったと想像される以上、吾々はカントの考えた直観空間をユークリッド的であったと想像するのが自然であるであろう。それでは所謂非ユークリッド幾何学はそれがユークリッド幾何学と相容れないという理由からしてカントの直観空間に基くことは出来ないと云わねばならぬのではないか。