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ぶつりてきくうかんのせいりつまで

物理的空間の成立まで

戸坂 潤

(カントの空間論)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,996 字 · 61 页

青空文庫

三

上に立つ種々なる幾何学の空間を考え得るかが理解出来ない。そして之はカントが恐らく陥ったであろう処の困難である。カントは空間直観と思惟とを不当に密接に即ち不動な関係に結び付けたために、公理は直観の同語反覆的な裏面となり、一定不変なものとならなければならなかった。カントの考えからすれば私が先に述べたように直観空間が質的に平面性を持つならばそれはまた平行線公理を意味することとなり従って非ユークリッド幾何学と矛盾せねばならなくなるであろう。このような困難を脱する唯だ一つの道は公理を一定不動なものとすることを捨てること、即ち空間の直観に対する思惟の自由を認めることでなければならぬ。それはとりも直さず直観と直観の公理とをあくまで区別することに外ならない。即ち「直観空間」は幾何学の対象としての「幾何学的空間」とはその概念の内包に於ても外延に於てもあくまで区別されねばならぬこととなる。その区別の一斑を吾々は直観空間の三次元性に発見するのである。

三

今までのことを茲に反覆すれば、一つ、直観空間は規範性を持ち、二つ、直観空間は幾何学の対象とは別である、ということとなる。