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ぶつりてきくうかんのせいりつまで

物理的空間の成立まで

戸坂 潤

(カントの空間論)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,996 字 · 61 页

青空文庫

経験的直観に於ける感覚の一定量が次第に減じて零となる時純粋直観となる(K. d. r. V. S. 208)。直観空間はカントも考えたように一面に於てこのような虚空間 leerer Raum としての意味を失うことは出来ない。直観空間と感覚乃至知覚との関係は更に立ち入ってどう考えられるか。空間内に於ける形、量というような「純粋な規定」はアポステリオリに常に経験に於て与えられうるものをアプリオリに表象するが故に、吾々はそれを「現象の予料」と呼ぶことも不可能ではない(S. 209)。即ち直観空間は感覚を予料するものと考えられる。直観空間の内に這入って来る感覚はすでにそれに於て予料されてあるものでなければならぬ。感覚は直観の形式に対する直観の単なる内容というに過ぎない。それは全く直観空間そのものの下に原理上従属して了う立場にあるのであって直観空間に対して自らの特殊の立場を主張するものではない。かく考えて見ればこの場合の感覚は全く消極的であると云う外はないであろう。併しカントを離れて考えて見る時吾々は事実空間表象に於ける感覚の重さをより尊重する見方に逢着するのである。