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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
室生犀星『犀星王朝小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:荻吹く歌、舌を噛み切った女、玉章、津の国人、野に臥す者、花桐、姫たちばな。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 页
それは、消えたり点れたりするものの美しさであった。
「今宵はもそっと蛍狩りをいたそうではないか。」
「そなたは蛍のいるところで車を駐めるよう。」
「わたくしとても絶えて蛍狩りなどいたしたことがございませぬ。蛍頃になればこの夏こそ思いをとどけようと考えましても、月日はいつも蛍におくれがちにございます。」
「そなたは蛍を好いてか。」
「蛍ほど美しいものはなくたらちねのころより心をよせております。」
「では存分に今宵は蛍とあそびたわむれ申そう。」
「嬉しゅう存じます。」
幾すじもある小川のほとりで車は駐められ、夜露に冴えた蛍火は眼も綾なるほど、草の上にあった。萩、桔梗、女郎花、りんどう、そういう夏と秋とに用意された草々には、まだ花は見られなかったが、その気はいは充分にあった。
「貞時様、これご覧じませ。」
薄の葉のうらにいる蛍を上の方から見ると、葉の緑を溶いて光る美しさは眼も青くそまるばかりであった。彼はこうして何のためか、何の音楽をかなでるつもりか、夏のひと夜を点れたり消えたりしているのだった。哀れといえばいとも哀れ、賑やかであるといえば、さわに賑やかだった。
「こういう衣裳はお身によくうつるであろうの。