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いぬさんたい
犬三態
宮本 百合子
「都新聞」1939(昭和14)年10月30、31日、11月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,236 字 · 9 页
佇んで傘の下から見ていたが、そんな玄関前の雰囲気で生活というものをやっている家の人々の気持も、受け身の形でそれをうつしているようなぶちまだらなその犬の佗しさも、そこの雨の中にある全体の有様は哀れさと腹立たしさとを交々に感じさせるのであった。
その日はそうやって通りすぎた。それからあと、雨が降る日には、道のそっち側へいつも傘を傾けるようにして足早に通った。犬はずっと、雨が降りさえすると、やっぱりそこで小舎の屋根の上へ登って、黒子だらけの女のような顔をこっちへ向けては啼いているのであった。
朝のコリー
十年ぐらいの間に、その界隈の様子は随分変って来たのだが、特別この一、二年に新しい屋敷がどんどん出来た。坪二百五十円であるとか、それではこの辺一帯の地価に対して高すぎる、だから売れない。そんな噂があって、区画整理した分譲地もそこここまばらに住む人が出来ただけで数年が経過していた。すると、一昨年あたりから、地価の方はどうなったのか知らないが、今まで草蓬々としていた四角や長方形やらの空地の上に、いろいろな形の家が、いずれもとりいそいだ風にして建てられて行った。