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いぬさんたい

犬三態

宮本 百合子

「都新聞」1939(昭和14)年10月30、31日、11月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,236 字 · 9 页

青空文庫

分譲地の九分通りに、そうして家が出来た。

もとその一画は某という株屋がもっていた林や原っぱであった。

子供の自分、××さんの原っぱの奥で、運動会があるというので見に行った覚えがある。日向の芝生に赤い小旗がヒラヒラしていた。あそこへ××さんの唖の息子も来ている。そう云って集っていた近所の人々は目ひき袖ひきした。

そこの家には三代唖のひとがいたとか、三人の男の子が唖だとか、それに何か金銭につながった因縁話が絡んで、子供の心を気味わるく思わせる真偽明らかでない話が、その時分きかされていたのであった。

今のこっているのは、原っぱの奥の崖下にあった池のぐるりだけで、そこは分譲地にはならないから市の小公園になった。崖下は住みての種類がまるでちがっていて、崖下の家々の男の子らはよろこんで、夏はタモをもって来てその池のぐるりを駈けまわった。合歓木がその崖に枝垂れて花咲いたりする眺めもある。

外国の住宅区域というところを歩くと、たとえ塀はどんなに高くていかめしくても、そこに何か風流な工夫がほどこされてあって、思いがけぬ透格子や鉄の唐草の間から、庭のたたずまいが見えたりして、一つの街の風景をもなしている。