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こぶ

犬田卯短編集 一

犬田 卯

犬田卯『犬田卯短編集 一』。同一底本的分册已合并为一书。收入:瘤、米、橋の上。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,259 字 · 96 页

青空文庫

……いくらでもいいから……はん……ははア……いや、全く……それではまず……さいなら。」

そこでがちゃりと受話器をおく音がして、急ぎ足にスリッパを鳴らしながら係が現れた。半白の小柄な猿のような貌をしたおやじである。わざわざ事務机には向わず、みんなのいる方へ向って火鉢の向う側へ蹲み、両手をふふん……と言いながら組み合せた。出来るだけ七むつかしい、が誰にも当り触りのない顔を彼はそこへ作って見せたのである。

「どうだや、それでもいくらか来るあてがあるのかい」と一人が訊くと、

「それが、どうも――明日にならなけりゃ分らないと県の方では言っているんで……」

「明日、明日って、随分その手食ったな。まるで何かのようだぜ、組合も。」

「いや、君らはそんな冗談言っていっけんど、みろ、これで、県の方だって、組合の方だって、ここんとこ不眠不休で心配しているんだから。はア、組合長ら、昨日から寝こんじまった位だから――県庁へ行く、農林省へ行く、肥料会社まで行って見る。全くお百度踏んで、それでも何ともならねえんだ。農林省の方では、とにかく早場地方が第一だというわけで、出来るそばからそっちの方へ廻送しているらしいんだし、そこに百叺でも五十叺でもいいから、こっちへ取ろうという始末なんだから、これで、並大抵のことでは……」