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はんにん
犯人
「群像 第八巻第一号」1953(昭和28)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,695 字 · 26 页
「オレは疲れきっているのだ」
と彼は思った。これを神経衰弱というのであろう。あるいはこのまま廃人になるのかも知れないなぞと切ないことが考えられて、彼の意識は思わず薄れて消えがちであった。
その彼を毛里は蔑んで見ていたが、急に確信してニヤリと笑うと、彼をバスに押しあげて自分も乗りこんだ。その確信は花井の容疑についてではなく、人見の容疑についてであることは云うまでもない。
★
夜の八時ごろバスは人見の村へ戻りついた。人見は疲れきって口もききたくないほどだったが、毛里は寸刻の休みも与えてくれなかった。ただちに花井を連れてきて対決させたのである。
「そんなことを云った覚えはないです」
と、花井は狂気のように猛りたって叫び、また怒った。それに対して人見はもう蚊のなくような声で自説を主張することしかできなかった。
「とにかく平戸先生をよんで訊けば分ります」
主張というよりも、あきらめきったようなかぼそい声であった。
毛里はこれから寝るばかりの平戸先生を強引につれてきた。平戸の証言はこうだった。
「私は仕事に耽っていましたので、お二人のお話が耳につきませんでした」