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ろうしつき
狼疾記
「南島譚」1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,540 字 · 47 页
二
ポケットを探って取出した部屋の合鍵が、掌にひやりとした感触を与えるほどの時候になっていた。
暗い部屋に入って電燈を点け、まず表に向った窓を明放って空気を換える。それから、隅に吊るした鸚鵡の籠をのぞいて餌の有無を見てから、衣服も換えずに、ベッドの上に仰向けに、両手の掌を頭の下に組合せて、ひっくりかえる。
そう疲れるはずはないのに、ひどく疲れたような感じである。今日一日、何をしたか? 何もしはしない。朝遅く起き、朝昼兼帯の食事を階下の食堂で済ませてから、読みたくもない本を無理に辞書と首っぴきで十頁ほど読み、それに倦むと、親戚の子供の死んだのにくやみの手紙を出さなければならないことを思い出して、書こうとしたが、どうしても書けない。結局手紙はよして、表に飛出し、街へ行って映画館に入り、そうして帰って来ただけのことだ。何という下らない一日! 明日は? 明日は金曜と。勤めのある日だ。そう思うと、かえって何か助かったような気になるのが、自分でも忌々しかった。
時勢に適応するには余りにのろまな・人と交際するには余りに臆病な・一介の貧書生。職業からいえば、一週二日出勤の・女学校の博物の講師。