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さる
猿
宮本 百合子
「サンデー毎日」1922(大正11)年7月10日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,437 字 · 11 页
お蔭で、お前までこんなスープにありつけたんだわ。
ヨハネス 有難うよ。
空腹と見え、ヨハネスせっせと物を食べる。エッダ感服して眺め、やがてさも大発見をしたように、大きな声で、
エッダ ヨハン! まあ、どうしてお前、そんな猿みたいな顔をするの?
ヨハネス (首を擡げ、口の辺を拭き)何が?
エッダ パンを食べる時さ。なぜそんな猿みたいな顔をするの?
ヨハネス ほんとかえ?
エッダ (力を入れて頷き)ほんとだとも! まあ、私ちっとも今まで知らなかったわ。
ヨハネス (照れ)いそいで食ったから――。
エッダ (俄に好奇心で熱くなり)ね、ヨハン、もう一口食べて御覧よ。ね、ゆっくり。私こうやって見てみるわ。
ヨハネス、少し赧い顔をし、工合悪そうに、ゆっくりパンの一切れを食べる。
エッダ (熱心に見守り)ほら! ほら、ほら! まるで、本ものよ、ヨハン。まあ、お前ッたら!
母親 何だえ? 大騒ぎをして――
エッダ (得意げに)ヨハンが猿なのよ。
母親 馬鹿! お前の頭の螺旋(ねじ)がゆるんだんだろう、しっかりおし。
エッダ そうじゃあないわ。だって、ほんとにそうなんだもの。
ヨハネス (機嫌わるく)光線(ひかり)のせいだよ、エッダ。