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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
そういうとき、どんな形で暮すのか、全く今は判らないけれども、何処ということさえ茫漠として居りますが、たった一つ極めて明瞭で、こころを動かすことがあります、それは「一緒に」という短い言葉です。これは詩の題として恥しからぬ表現です。一巻の美しい物語の題であり得ます。この言葉をくりかえしくりかえし考えていると、つまりはこうして話し出さずにはいられなくなって参ります、わかるでしょう?
動坂以来、いくたびか引越しをいたしました。けれどもこの言葉が、こんなに生々として中核にある移りかたというものは知りませんでした。これは何と瑞々しい気もちでしょう。何か愉しげなような感じでわたしを揺ぶります。自分で自分に訊きただします、(何だかいぶかしくもあるのですもの)果して愉しいことなのかね、と。さすがに、すぐは返答しかねるのね。まさか、そう単純でもないわけですもの、全く。でも、やっぱりわたしがそのために自分の用意を心がけることのうちには不思議な感動があり、詩の新しいヴァリエーションの響があり、その展開の期待と、そこでも詩はそのときなりの充実をもつに違いない信頼とがあります。