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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

しかしそこが又面白いもので、可愛がる世話するということの反面には、そのものの生死にかかわる一切が関係して来るということなのね。そう思って、成程とも思います。

四匹は白黒、チョンビリ茶。丈夫に育つけれども又この間、妙なことがありました。わたしがそちらへ行っていた間、茶色の野良犬が来て若い母なるチビと大噛合いをやったのですって。それは雄だったのだって。狂犬ではなかったかと心配していたら、次の朝、チビは全くソワソワして遠吠えをしては縁の下に入るのよ。丁度ふとんの用意していて、使わない綿を、奥の室のテーブルの下へ入れたら、チビはいつの間にか、その綿の奥へかがまりこんで、呼ぶと、尻尾をふる音ばかりパタリパタリしてどうしても出て来ません。わたしの家畜衛生学によると、これは狂犬のはじまりの動作なのよ。不安になる、遠吠えをする、暗いところに入って出て来ない。さてさて困ったよ、とチビに向って申しました。到頭はじまったかい。仕方がないから、まだ、わたしの声が分って尾をふるうちに、ともかくつないでしまおうと、首わをつかまえて綿のうしろからひっぱり出して(腰を、おとしてズルズル出て来るのですもの、誰か来て! と呼びたくなったわ)北側の光線のしずかな側の柱につなぎました。