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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
明日は、タンス(引出しの一つこわれたの)をやります。それと台所用品と。このきょう明日の荷物は、前には考えていなかった分ですが、こんどはともかくここからどけておいて見る気になったものたちです。長火鉢はやめます。ごく実用的でもないし。今は成城まで四十円平均よ、リヤカー一台が。
東京周辺の街道をゆく荷物車はどの位夥しいでしょう、都電の停留場に待っている間だけでも、三四台荷物をつんだ車を見ます。わたしの一見貧弱な何の奇もない荷物もその埃っぽい列の一つに加って、カタカタと行くのですが、その荷物たちは、自分に負わされている不思議に建設的な光りを知っているでしょうか、荷物が繩でくくられゆられてゆくとき其々の荷主のこころをつたえて鳴るものとしたら、今の東京のぐるりの街道ばたの人々はああして暮していられないでしょうね、そして、わたしの荷物はどんなに鳴るだろうと考えると、笑えて来ます。アンポン、ブランカ[自注13] ブランカ アンポン。ウレシイアンポン と鳴ることよ きっと。
きょう、これから二階で、二通りのこまごました荷のよりわけをするわけです、自分と一緒に田舎へゆく分、のこって役に立つ分。