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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
その芸術家の誠実さと難破の危険とは正比例するようにさえ見えます。「伸子」からその後の切りかえのとき、難破必至と観察されましたが、幸に乗り切ることが出来、それから先の、もっと内部的な、もっと切実な、成長は、かくも身もこころも犇と美しさの感動の裡に可能にされたことは稀有なことです。婦人作家の歴史は、ここに到って、真に新鮮な、メロディーをもって高鳴ると思います。個人のよろこびを超えて居ります。沖へ出た感覚のまざまざしさ、おわかり下さるでしょう。
わたしの痛感することは、そのような可能を現実にもたらした一つの生活力の深さ厚さ活々さへの感歎です。人は何とやすやす偕に生きるというでしょう。ともに生きるということは、然しながら、どれほど大したことでしょう。真に生ききれる力量が、その無言の規模によって他をも生かすその生かせかたは、壮麗というべきだと思います。自身の生きる力の溢れによって、生きるべきものは、おのずからそれによって活かされてゆく、その創造の微妙さ。古代の埃及人は、肉体の創造されてゆく力、自然力を極めて率直に感歎して、視覚化された人体の形でその泉の下に生成する小人間を彫刻しました、彼等の壁に。