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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
その真面目な、原始の精神は、自然力の崇高な浄らかさを感じさせますが、今わたしの話しているような、こういう風な人間精神の生成の過程は、どういう表現であらわされるでしょう。文学と、そして音楽と。それしかないようです、そういう展開そのものが生粋の詩情と理性との全くすこやかな諧調からしか期待されないとおりに。人間の最も鋭い感性と雄渾な知慧との実のりです。
このようにして、わたしたちの愛する詩集の頁は、おもむろにひるがえされ、ひとしお溶けるように甘美であり、泣かしめるばかり調子高く、そして晴れやかにたのしい休息にみたされた新局面をくりひろげます。
大きく育つ樹はそれが天然だから、その育ちの大さを自分で知らないものかもしれません。しかし、その天真爛漫な樹も時には、自分の梢が、余り遙々と地平線を見はるかし、太陽がのぼりそして沈むのを見守っていることに心ひそかなおどろきを感じないでしょうか。
或る晴ればれした早朝、ふと目がさめて傍にすやすやとしているものを見たとき、それが自然である故にしみじみと新しくそのことを感じ直す、それに似たよろこばしき確認というものも、人生にはあります。