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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

寂しいようにもなるわね、東京へ出て来たって昨今のように夜がこわいと、自分の生れた家へは泊れず、つい坂一つあっちの春江のところにとめて貰ったりして。本当に本当に気の毒です。

きょう帰りに、正月号の雑誌をしらべに本やによりましたら、十二月の『文芸春秋』はまだ出て居りませんでした。未曾有のおくれかたです、お正月に十二月号、正月下旬に正月号となりそうです。紙の都合その他ね、すべてこの順で、年鑑もいつ頃出るでしょう。本は殆ど全く新刊はありません。

隣組の用事で、ちょいちょい立ったりしてこれをかいているうちに、もうすこし薄ぐれて参りました、寒いことね、今眠さむなのです、眠い眠いの。そして伝八さんの細君は参りません。三時すぎてはもう来ますまい、夕方の用があるから。

今夜ユリはホクホクよ、早く御飯たべて、さっさと七時になるやならずにねてしまう計画です。夜中におきたって、其なら幾分寒さもしのぎよいでしょう。

今時分横になって何をしていらっしゃるでしょう、もう書きものはおやめでしょうし。手がつめたくて書きにくいでしょう? 森長さんのところへ電話したら、二年生(?)の男の子が出て、ア、ア、モシ、と云いました、笑えました。