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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

お話していたところ[自注7]は中野区鷺の宮二ノ七八六です。特別何もたのまず出かけます。何も彼も用意すると何だか本当に帰れることがなくなるようで気味がわるいから。あなたのお金だけはお送りしておきます、森長さんへ電話します。到頭おやりになる、いやな方。

[自注7]お話していたところ――壺井繁治の家。百合子が顕治の郷里島田へ行くことになり、その留守中のために顕治に知らせておいたもの。

三月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

三月二十三日

風が荒いけれどもそれも春らしいというような日になりました。今丁字の花が咲き、よく匂って居ります、目白の庭石のよこにおいて来たのも咲いているかしら。

きのうは、どうもありがとう。余りな話だったので自分では十分耐えたけれども、眠れなくなって。すぐ露見するから大したものね、露見することが大変うれしいと思いました、観破して下さるということが、ね。

けさは、国府津引上げのため、こちらにいたひとも呼出しで、国の朝飯のことしてやり乍ら、心から感じたのは、こうやって台所で働き、みそ汁をつくり香のものを切るならば、わたしはその人のためにこういうことみんなしたい人があるのに、と。