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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

わたしが知らないで、しまわれているまま腐ったりしているものがありませんから。その意味でこれからは今としては最上というところでやれそうに思って居ります。魚や肉は配給以外うちは暗いものなしですからきまっているが。小松菜でもまきます、樹のかげというけれども日向のここへ一うね、あすこへ一うねと、パラリ、パラリとうなえばいいのだわ、ねえ、何も四角いものつくらずと。わたしがいろいろやるときっとすこしは動きが出るでしょう。ものにも気分にも。小松菜も蒔こうという気になったのだから、余程丈夫になったわけでしょう、ひとりでに動くのね、そうやって。

岩波文庫の『名将言行録』は渡辺町へでもたのみましょう。文庫は殆ど市中へ出ず売切れます、ましてや今度「不急出版物一時停止」ということになりましたから。紙を最も功利的に使う本やの工夫で美術や専門技術の高い本が出たのがついこの頃の現象でしたが。この四年ほどのうちに出版もひどく波瀾いたしました。インフレーションと云われ、I・Tが財産こしらえたころから。戸塚が生活を破綻させ些か新潮に儲けさせた段階、その次の十五銭本か小説か分らない作品集の出た時代、それから美術、技術本、そして只今。