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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
とにかくくりかえし御心にかけさせておくのはよくないことですもの、その方が大事だから。(恩にきせる? そうでもないのよ)
桜はもう八重になったのね、たのんだ時は一重でしたが。久しぶりね、八重桜なんて。美事だったというのはようございました。
わたしの畑は笑止千万よ。何しろ、朝飯前に種子を蒔くなんて例外をやったものだからその日の午後から沛然と雨になって、ずっと三日ふり、そのあともああでした。そのためにホーレン草の生えるべきところから、何だか分らないヒョロヒョロのものがすこし出ていて、最も元気なのは楓の二葉です、わきの枝からおちたのが二葉を出しているの。楓のつまみ菜ってあるでしょうか、あきれたものね。もう少し待ってみて工合によっては猛然耕し直して豌豆をまきます。やがて南瓜もまきますが。土と天候とは沈黙のうちに教えています、俄づくりやつけやきばは役立ちませんよ、と。心のうちにシャッポぬいで居ります。
この頃は生活のひどさで、人間の上塗りもはげることはげること。修繕がきかないから、みんな地を出して来ています。生地のしっかりしたものにはかなわないということをどんな平凡な人も感想としていて、これも興味あることです。