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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
そして、おべん当にする筈の握り飯を生蕃袋からとり出してたべました、その握り飯は、柏の葉にくるんであります(なかは平凡だけれど)
それから健坊と遊び、又ブリュラールにかえり、さて又帰るべきところへと帰って来てしまった次第です。この頃の旅行って、まるで昔の旅ね、汽車にのる迄は分らないのね、そして、ここの人たちみたいに人まかせな人は、実にたよりないこと夥しいものです。今日の一日がどういう意味をもっているかということをちっとも実感として感じていません。〔中略〕
けさは珍しく八時すぎまでしずかでした、ブンブンが。だもんだからわたしはわざわざ廊下まで出て行って「何か情報が入っていないかしら、飛んでないから」と云ったら「アラ先生大丈夫、こういうこともありますのよ」と瀧川さんが申しました。
ブリュラールはどんな印象でしたろう。一種の書き方ね。自伝を書こうとすると、全く私自分というものにひっかかります。スタンダールが其を気にしているのが同感されます。自分の場合だったらどうかしら。おなじみの伸子をつれて来る方が話しよさそうね。時代の相異も自分というものの観かたの角度もあって、わたしは自分を、時代の一人の女、それによって語られるその時代の生活という風にしか或モティーヴをもち得ません。