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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

いろいろな地図をみます。札幌鉄道局が十四年に出した北海道旅の栞というのは、旅行者に便利に出来ていて、網走町というところを見ると、山積された木材をつみこむ貨車の絵の上に、簡単に物産の説明があり、名所(景勝)もかいてあります。これでみると、網走の町から程よくはなれた駅から二三里入ったところに温根湯温泉というのがあって、神経系の病気にいい湯のあることもわかります。それから父が旅行に使ったポケット地図。三省堂の世界地図附図。更におどろくべきはここの家の戸棚から徳川時代に作られた内浦湾附近の地図があります。そしてわたしは安積山の風にふかれ乍ら、明治十二年発行内務省地理局の印のおしてある日本地誌提要という本をひらいて、北見というところをあけます。当時は総てで八郡あり、戸数は五百十一戸、人口二千七百七十人(女七百七十八人)あり、網走は駅路の一つの町であったと書いてあります。北海道志廿五巻という本もあります。明治十七年頃そこには病院しかなかったとかいてあります。大番屋があったと。

祖父は若年の時、貧乏な上杉藩の将来を思って北海道開発の建議をして、年寄から気違い扱いをされました。