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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

わたしも其には心から同情いたします。本当にそうでしょう。好ちゃんは本当に見事に義務を守った勇士ですから泉子のこころとすれば世界の珍味もまだ足りぬ位でしょう。それだのに「ねえ察して頂きたいのよ」と申します「わたしは、これっぽっちのかんにお砂糖をためたのがあるきりよ」と二つの手で小さな丸をこしらえて見せます、「ほんのちょんびりの油があるきりだし玉子なんてどうしたら買えるでしょうね。田舎でも一ヶ二円よ」と申します。聞いている私は笑い笑い恐縮いたします。私にしろ何に一つそういう方面で顔はきかないのですもの。しかも今のようなとき泉子に「そんな心配は二の次よ」とは常識がある以上決して決して云えませんからね。好ちゃんは少くとも半年は休養して(しかも十二分の条件で)万事はそれからにしなければなりません。泉子曰く「その期間はわたしが出来る丈何でもするわ、つまり安心してのんびりしていられるようにね」泉子の計画は健気ですが、好ちゃんは御存知の通の人柄ですから、果して悠々休養するでしょうか。ねがわくば、あなたからよくよくお申しきけ下すって、それこそ展望的に悠々とするよう、泉子の出来ることは実に限りがあり且つ歯痒いでしょうが、そこが辛棒のしどころと、よくお教え下さい。