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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

きのうの帰途きょう、どちらもすぐ解除で安心いたしました。雪と雨とで壕がしめって大事にしまっておいた封緘の糊がくっついてしまったので、今コタツに入れて干して居ります。これから雨が多いとしめって困ることね。パール・バックの支那の空という小説があります、お読みになる気があるかしら。近作です。「大地」などとタッチが違い、書いている場所の相異を思わせます。

三月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

三月十一日 ウラに書くの、やめましょうね。裏と表とがぬけてしまうとつまらないから、ね。

二月二十三日のお手紙頂きました。ありがとう。今年のおそい大雪は、路をゴタくりにいたしましたが、おかげでうちの屋根は火の粉から守られました。きょうは、食堂の南側の陽向に背を向け、例の小机をおいてこれを書いて居ります。カナリアが風の中に囀って居り、ラジオの横に柔かい桃色と白との春らしい花があります。この花は丁度二十四日だったかいかにも春雪という感じの日に団子坂下の花やで買って帰ったのでしたが、その花屋はもうありません。カナリアの餌もどこで買ったらこれからいいのかしら。