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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

03 一九三六年(昭和十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页

青空文庫

せちがらさを、この老大家は道徳的見地でだけ批判して居られるのですから。もっとも御自身の経済はせちがらさに動かされないからそうなるのでしょうけれども。

江井のことについて心配して居ましたが、向島の西村(母の実家)の土地が空であったので、そこへ四十室ばかりのアパートが落成し、江井はその管理人兼十何年か後の所有者として生活しはじめました。

車はプリムスをドイツ製オープンのアドラーに代え、国男自身運転して事務所にかよって居ります。

この古い家をこわして、小さい、単純な(設備はうんとよくしたい由)ものを建てるそうで、二月頃着手するでしょう。裏の土地が沢山あきます。小さい家を二つ建てるのだそうです。「姉さん、平ったく考えて、姉さんが住むのが一番いいと思うね」と云います。

私としては目下考慮中です。深甚に考慮して居る。おひささんというひとは、いろいろ自分の心持から、金の点から、私と一緒に暮すことはことわって居りますから。作家にとって実に大切である生活の日常的アトモスフォールの点から、考慮中なのです。こまかい便利は勿論便利にちがいないし、用心もよいにはよいが。――