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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
この手紙はまだ出しません。でもどうも書きたい。又連作にしてお目にかけましょう。
私はこの一月頃から半年ばかりの間に随分沢山評論風な仕事をしました。その結果、自分の仕事というものについて一層いろいろの理解がふかまって来た感じです。つまり、私は評論風な仕事における自分の特質というもののプラスとマイナスの点がはっきり分り、現在の自分として、どの位までのことが出来るかということも分ったのだと申せます。そして、まことに面白いことには、この間の手紙でも一寸申したように、自分の評論が先へ先へと押してすすめてゆく線を、今は作家としての半面がついて行っている(両方一足ずつチャンポンに前進する)ことが分った。こういう云いかたは私らしすぎるが――お分りになるでしょう? 書いて行くということについても、何か一つ目がひらけたようなところがある。普通、芸術家たちは書くと云い、私もこの永い年月書いて来ているのだが、書くということは存在させることであるというのを、感覚としてまで感じているのはこの頃です。それが文字によって存在させられなければ、どんな作家の善意も努力も生活内容も存在として実在しないという事実は何とおそろしいことでしょう。