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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
二千百円ぐらいの整理をし、あと千四五百をあまして、出かけようとして居られる由ですが、その価では買手が見つからぬ由です。きのうもゆっくりお母さんとお話し、野原は、あなたも思い出をもって愛していらっしゃるが、将来、若い二人が仕事をしてゆくには、どうしても、今の場所の方がよいから、ここは年の地代 \60 でやはり持っていて、向い側に九十坪ほどの横長い地面が \1200 ほどで手に入るから、達ちゃんの結婚のための必要もあり、出来るだけ早くそこを手に入れておいて、貸家にしてもよいということに大体御相談がまとまりました。この家を達ちゃんのものにしても土地がないので、この辺では結婚の話にもなり難い、まア土地も一寸あるというところで嫁に来させても、となる由。それで私は、私たちで、その半分でも出来るだけ早く都合して、そっちを解決して、出来ることならお父さんに達ちゃんのお目出度を見せてあげたいと思います。私たちのお目出度はあんまり本質的すぎて、世間のお祝儀は高とびした形だったから。ああやって、お父さんがニコニコ楽しそうにしていらっしゃるとほんとうに、そういうよろこびもさせてあげたいと思うし、お母さんのそばにいる、若い女のひとの手も実に入用なのがわかります。