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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
私は「ここのもの」になりました。これはいろいろ面白いの。きのう徳山にいられる甥(銀行員)が娘さんのお嫁のことで見え、私が初めて紹介された。前かけをかけていたら、お母さんそれをおとらせになって、髪をかきつけてきた私を一寸しらべるようにみて、そしてお引合せになるの。私がお母さんのわきでお茶をいれたり何かする。それを、お父さんまで至極満足そうにして眺めていらっしゃる。こういうときの私の心持、おわかりになるでしょう? もし貴方がわきにいらしたらどんな顔をなさるだろうと、あなたの独特な一種の表情を思い浮べ、微笑も禁じ得ず。但しこれはひとりになってのとき。
私はこっちの地方と東北の田舎とを比べ、事毎におどろきます経済的な点で。みんな女のひとなど都会風の装。一寸出かけるにもよいなりをして、私なんか質素です。そういうこともおどろきます。中学生は在郷軍人の服と同じ色の服、キショウだけちがう。女学生は大抵東京と同じセイラアです。野原にゆくとき虹ヶ浜にまわりました。春陽駘蕩たりという景色で、あの家[自注12]には人が住んでいました。下松には日本石油、その他工場が近頃の景気で活動して居り、江の浦のドックにはウラジオからも船が入ります。