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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
が切れ、不時着に迫られたが機首を突込む危険が見えたので一人の婦人飛行士にパラシュートで飛下る命令が下った。彼女はそれを実行した、機体は幸無事に降りることが出来、一週間ばかり密林での生活ののち救われた記事が『新青年』に出ていた。パラシュートで独り下りた女のひとの経験は恐るべきものです。よく沈着さと推理と体力とで飛行機のところまで辿りついたが、やっと辿りついたときの彼女は片足はだしで、杖をつき、茶色のジャケツの胸にレーニン章をつけて、辛うじて密林から現れて来た由です。この物語の中には、イヤハートの生涯と又全く異った美しさがあるではありませんか。涙の出るところがあるでしょう、人間の生活の美は複雑ですね。
日本では自動車をやれる女のひとさえごくまだ尠いから、飛行機まではなかなかでしょう。自動車をやる女のひとは有閑的か何か的ときまったような工合故。咲枝や寿江子は出来るのに本当の免状をとる迄はやらない。
一月三日
きょうは久しぶりで髪を洗って貰って、小豆島産のオリーブ油をつけて、非常にさっぱりしたところです。十二月は中旬にならないうち病気になってしまって、ちっとも髪など洗うときがなかったから、全く爽かです。