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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
それはいかにもその頃の女の子の年にふさわしく小型のを。そしたら使うに余り便利でなくて、長い間持ってはいたがどうしてしまったかしら。原稿なんか一度も書きませんでした。それから、いつかも話した母の記念品。それからこれ。
きっとこれは長くよく役に立つでしょう。ガラスのあなたのお下りのペン皿にのせられつつ。そして、沢山の沢山のアンポン的物語とそうではない物語とを告げるでしょう。ときには魔法の小人のおはなしをも。
文房堂では同じとき、鉄製のどっしりしたブックエンド一対をも買いました。これは栄さん夫妻へのおくりものです。ター坊の思い出の日があのひとたちの十五年目の結婚記念日の由です。祝うようなんじゃないと云い、それもそうですが、ともかく十五年は一区切りだから、その本立てをあげます、私たちからとして。二つがあってはじめてそのものとして役立つというところがブックエンドを選んだ所以です。
原さんはもう退院して赤ちゃんと世田ヶ谷へかえりました。卯女(卯年の女の子だからの由)という名。中野卯女。この卯女という名は吉屋信子の「家庭日記」という小説の主人公の名だそうで、稲ちゃんもアラーと云ったのですが、お父さん氏の意見ではあの小説はそう永生するものではないからいいのだそうです(勿論その小説はよまないでの話)。