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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
空気故、それほどの興味もないところもあり。菊富士はあれでも下宿やでしたから、すこし又ちがっているわけです。なかなかむずかしい。さりとて林町へだけいるならば、やはり私の生活は全く別箇にやらねば、建ちゆきませんし。
この家、今この家賃で決してもうない。借すものもない。だからうっかりこの家を引はらってしまえない実際です。仕方なく林町へ、というのはいやです。一年に三―四百枚小説をのせることが出来れば経済的にはどうやらなり立つのですから。ほんとに考えてしまう。あっちへいってもこっちへ来ても、生活のパタパタからやっては三日ぐらいいて又あっちというの、本当に考えものに思われます。機械的にそうやらねばならぬものとしてやって見たところで、意味ないし。
――○――
同じ筆者の翻訳でも、訳をする人の文章に対する感覚の敏感さによって何というちがいでしょう、与えるものの。あの本の初めの部分は文庫で、これは名文です、底まで味いをつくして訳しているから全く感動すべき動的な思索の美が流れています。あとの部分は別の人ので、その人は理屈を辿っていて、文章の美まで到っていない、ためにやや晦渋で、活きた美を失っている、残念です、でもつづけて居ますから大丈夫。