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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

お話の電報出しました。あなたの仰云った通りの文言の下にお名を入れ、つづけて「ゴアンチャクニテアンシンツカレオタイセツニ ユリコ」として出しました。「アンチャク・ゴコウイシャス」という電報がそちらからかえったら来て居りましたから。

お母さん、しんから御満足でおかえりになったのは何よりでした。誰の目にもその満足ぶりは明らかであったようです。あなたのお心づかいも決して無駄ではなかったから、うれしいと思います。かえりの汽車の窓で、顔を赤くして涙をこぼしてはハンケチで拭いていらっしゃるのを見たらお可哀そうでした。丁度すぐとなりの窓で出征軍人が盛に「死んでかえれとはげまされ」と歌われているので、猶々感傷であったのです。御一緒にどこかまで行けばと思いましたが、特急でそれは出来ませんでした。でもそれは半分はうれしい涙、満足していなければ溢れぬ涙でしたから、きっともう今日あたりは、さぞやさぞ陽明門や何かのお話で賑やかなことでしょう。私たちは相当大役を果した感じですね。

昨日は大森の奥さんと落ち合ったので一緒に家へ来て本の送り出しをやって、それから雨降りの中を大日本印刷まで出かけ(『改造』