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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そして研究して下すった方は皆さん立派な本をかいたり博士になったりなさいました」胸の中が妙になった心持、今もまざまざ思い出します。だが、アイヌの生活そのものはもとのままということ、八重子さんの心の中で、声なき叫びとなっているのです。この人は和歌をよみます。この人は又バチェラーにつれられてロンドンにも行ったことがあります。

当時私は八重子さんのそういう心持、悲しみ、キリスト教とアイヌの多神教との神話的な混同、そんなことに興味をもって書きたかったのですが、ものにならないでしまいました。今どうしているかしら。

二十七日ごろから二三日図書館通いしようと思うので、それ迄に、こまごましたものもう二つばかり書いてしまおうとしているところです。

筧さんの奥さん(光子さんという名でした)でも来てくれるといいけれども。でもいずれにせよ、私はこの間何とか永続的な形での生活をさがしてバタバタして、そんなものはないとわかって度胸がきまりましたから大丈夫。光子さんだめなら又そのように工夫いたします。三十日迄まだ五日ね。どうぞ本当にお大事に。

五月二十九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕