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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

文学の世代において、婦人の刻みつけた線を一寸でも自分の力として先へおし出すこと、それがどのような意味をもつかということを真面目に考えます。ただ流行非流行の問題でなく、その生活と文学との本質において。自分の生涯で、せめて一分なりそれをとげたいと思う、ね、グイグイ、グイグイと押してゆくよろこびは、よしや知ることが出来なくても(客観、主観の関係によって)。

フィレンツェのミケルアンジェロの仕事ぶりのところ、いろいろ忘られぬ感銘です。メジィチの墓の彫刻で、与えられた条件を溢れ出たというところ。あすこは二重に心に刻まれます。このなかには、いろいろとひっぱり出される暗示があります、芸術上のこととして。ミケルアンジェロが、現実が彼にとって辛ければ辛いだけ仕事に熱中したところ、熱中出来たところ、それだけのものをもっていたところ。これも通りすぎることの出来ないところです、私などには。最も健全な、最も歴史性の充実した人間、芸術家になり切るというところ。あなたのおっしゃる「日々の精励」ということの意味、それが唯一つの道であることの謂。

今はまだダイナモが激しくまわった余波で、お喋りをとどめるのに骨が折れます。