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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
私はこの頃心づいておどろいているのですけれど、病気というようなもので肉体が或弱りをあらわすとき、いわば、耀よい出すという風にややつかれた肉体の上にあやとなって出る精神のつや、微妙な知慧のつやというようなものは、実に見おとすことの出来ない、真の人間らしい一つの花です。深い尊敬と愛とで見られるべき。では、三十日に又。
六月二十六日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
六月二十六日 第五十六信
さて、ひと息したところで二階へあがって来て、今度はゆっくり私たちのお喋り。小説ね、思ったより手間がかかって、今日送り出したところです。たった二十二枚ですけれども。それから夕飯の仕度して寿江子とたべて、寿江子出かけ。私はひとり実にたのしく、久々の風呂に入り、さっぱりとしたところなのです。もと、「小祝の一家」という小説、覚えていらっしゃるでしょうか。乙女という女主人公覚えていて下さるでしょうか、お菊とも云った。乙女がひろ子という女の生活の視野から去ってしまう前後の一寸した出来ごとと、そのひろ子という女が、小包をひらいて干している毛布に良人の重吉という男の髪の毛を見つけ出して、それをすてることが出来ず一つ一つひろって小さい髪の毛たばを指の間にしっかりともちつつ、晴れわたった初夏の日光の下に立っているときの心持、そういう