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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
そちらへは、火木土のうち、火の出がけによってそれからあっちへゆくようにしようと考えますが、どうでしょう。土はどっちもせわしいからなるたけやめて。八時といっても九時以後になるでしょうから。すこしおくれればそれでよいし、又、つづき工合でおくれて困れば、別の水、金にしてようございますし、ね。そういう出勤つづきだから、いよいよもって私の書きつづけようとする仕事はむいています[自注20]。とても小説は駄目ですから。時間のみならず。一日おきずつ印象深いものの間を通るわけでしょうから。強い二つの世界に同時に住むことはできないから。私としてはこういう出勤珍しいことですが、よく注意して疲れすぎないよう、早ねも守り、マサツもやって気をつけますから御心配ないように。八月に入れば目白で暮せます。八月は派出婦でも雇います。そして、私の留守の間、あなたの冬物の仕立をすっかりして貰います。これはよいプランです[自注21]。〔中略〕きまった人は見つかりません。けれども八月はそれできっと工合よく行けましょう。目下のところ、それから先のプランなし。〔中略〕
漱石の例をひいてはふさわしくないが、しかし、一人のものをかく人が四十位になってからものをかきはじめるというのは微妙な関係をもちますね。