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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

家庭はそういう形でだけ云えるでしょうかと思ったのです。人間がよく成長してゆくために心のくばられているところとしての家庭と考えれば、父を失って母と子とだけの家庭に、その善意を認めないという法はないでしょう。冬の夜長に、そういう母が、子供でもねかしたあと、その雑誌をくりひろげて見たとき、どれもこれも夫婦そろって、自足していて、それがいい家庭と云われていたら、ではさけがたいことで父を失った自分たちの家庭は、そのためだけにいい家庭と云われないのか、世間はそういうものか、とどの位痛切に感じるでしょう。その苦しい心持を思いやったら、何だか私はそういう女の心、母と子の生きる心に満腔の同情を感じました。そこで、私はいい家庭の概念に異をたてるのではなく、その感じを更にひろげたものとして母と子の家庭をもそれを生きている心に目安をおいて、十分いい家庭として通すことにきめました。そして、小野宮吉さんの家庭はその生活のありようも知っているから、それをえらびました。

その写真に短い文章をつけます。きょうはそれをかいたり、徳永直さんの「はたらく人々」という女を主人公とした小説の書評をかいたり、『新潮』