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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
世智辛い世の中では文壇的特色の発揮に生存競争的な熱意をもっているのですから。文学のためというよりもね。勉学、勉学、よ。
ああきょうはさむいことね。ものをこうして書いている息が白く見えます。そして手がかじかむ。火鉢に火を入れているのに。
今年の十二月は思いがけず可笑しい月になりました。きょうから栄さんの妹母子が来ます。そして二十日からは多賀ちゃんでしょう。
栄さんの妹の娘はまだ四つか五つなのだけれど、眼の手術をうけるとき、おきて毛布に体しっかりつつまれて、苦しいからウーウーとうなりながら、それでも泣くのこらえて四十分も手術をされるのですって。健気で、泣けるそうです。そして、すこしよくなって来て、これで、眼鏡をかければ弱視の程度にはゆく由です。東京には芝かどこかに弱視児童の学級があるそうです。しかしこの母子は新潟へ住むのです。学齢になれば、又栄さんがあずかるなり何なりして方法を立てるのでしょうが。
林町のアカコはね、まだ頭の湿しんが快癒しないので、見参不可能です。下ぶくれの美人ですが、只今は赤くなってかゆがっていて可哀想です。でも、もうオックーンなどと云って、あやすとそれはそれは可愛ゆく笑うの。