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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
微妙でしょう。おかれている事情の裡で、なおこのように充ち満ち得るということ。これは私たちの生活の独自な収穫だと思います。私という琴に更に一筋の絃がふえたような工合。その手ざわりと音色とはいかがですか。
六日の月曜日に。どうか風邪をお大事に。きょうあたりから又ひとしきり寒さが立ちかえるかもしれませんね、
二月四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
二月四日 第十二信
きのうは、林町へ出かけるついでに、大塚病院の原さんを見舞って、神田の本やへよるつもりでそろそろ仕度しかけていたところへ電報でした。丁度二時というところ。それではどうせ出るのだから私巣鴨へまわるから、寿江子原さんのところへまわるようにと云って出たわけでした。髪が苅りたてでしたね、弁護士は七日までにどうしても仕上げなければならぬ書きものがあるとかで、八日にはゆく由です。この手紙より早く月曜お話しいたしますが。
あれから電車で東京堂へ。もう十二月から出来たら出来たらと云っているタイムズの支那地名人名字典、まだ出版しませんで、と東京堂の番頭君恐縮していました。まさか紙がないというのでもないのだろうのに。