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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

私の健康上のプロンプターはスエコで、何しろ永年持病と戦っているから案外疲労の測定が正確で、私より先に私の疲労が見透せるらしいから、口やかましい忠告に従わなければなりません。歯っかけのくせに何て姉さんぶるでしょう! 手紙を書いてもらう時の私の待遇はたいしたもので、二階の机の横に行火を造り灰皿を揃え、くしゃみをすれば大事な胴着を頭からかけてやって、そして一筆願うありさまです。

でもね、この頃は手紙を書くことに就ても呑気に構えてしまったの。あくせくして一通余計に面白くもない手紙を書いてやきもきしてみたところで、私達の生活の本筋に大した関係はないのだし、結果として、あなたが心配して下さることを、無にするようでは意味ないと思ってね。こう心を決めたら気が楽になって、あなたもそれでよしよしと云っていらっしゃるような気がしているけれど、それでいいの?

私はどうかしてこう云う気質に生れていて、御難つづきの人生などを予想しないし、有難いことに、そんな考えを可能にしないような光があるから、その点は大丈夫です。実際問題としては、目下の吾々の生活は銀行相手の赤字生活ですから、今年の末頃にはポチポチ仕事が出来ないと、閉口です。