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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
その晩床に入ったらこんな歌が出ました。
最近二十何年間にたった二つのうたと云えば先ず珍品に属しましょうか。
『文芸』のNの「混血児」。久しぶりでこのひとの書いたものをよみ、ちびた細筆で不足の絵具でカスカスにかかれているスケッチを見た感じでした。小説かいていた時の、よかれあしかれ、非常に低い素質のものながらぽってりとのびのよかった筆致は失われました。よくうれて、よくかせぐが、根に新しい境地が拓けていず、本当には文学がそのひとなりの前進をとげていないでああなのですね。文学くさいのが却っていやですね。あいまいな、鈍い、小さいそのくせ作家意識から神経を張ったような書きかたで。
尾崎士郎は「人生劇場」で浪花節のさわりめいた味を出したが、この頃、いろいろ経験したらその不用な感情の屈曲がとれて、感性が自分の脚で立つようになって、従って心情に湛える力が出来、同じながら火野のプロフェショナルにひねこびたのとは違った工合になって来ているようです。やっぱり細かいところで一人一人のちがいはあるものと感服いたします。
きのうもレンブラントの話していて、本ものを見たときどんな気がするということから、例えばベラスケスなんか何と美しい芸術だろうと思うし、ヴァン・ダイクなど実に人間も着物もうまく描いてある、成程と感心しますけれど、レンブラント