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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
ために皮肉になるという風で、その皮肉もやがてポーズになって、そこに落付くから、結局はくだらない無力のものです。
文学においても科学においても、つまり人生に於て、皮肉を云っている人間は牙のない虎で、しんは、綿がつまっているようなもの也。
ホグベンの本は冨美ちゃんに教材としていいかとも思い、将来太郎のためにもいいかと思ったのですが、そうでもないよう。下巻は買いますまい。
科学事象の説明は(例のひき方は)生活に即し人類社会の進歩の段階に応じてその選択はされて居りますが、何となし根本に混乱が感じられます。
藤田嗣治の絵について感想がありますが、それは又この次にね。要は、日本の画壇は藤田をうるし屋(ぬるという点)とか何とか悪口したが、勉強していて、それは決して馬鹿に出来るものでないということです。軍用画においてです。この話は又別にゆっくり。あんなに降ってもきょうはこんなにむします。どんなに今年はきの子が豊作でしょう(!)
九月十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
(同じ日)
きのこの話をしたらふと、お俊というひい婆さんを思い出しました。私が小さいときなくなったけれど、思い出すと炉ばたに丸く坐って、頭のてっぺんにぬれ手拭を畳んでのせていたのを思い出します。