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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

お客様の数は、目白のお医者夫妻とペンさんと位のものでしたが、食堂のテーブルは珍しく白いテーブルクロースに覆われて、その真中には菜の花や、マーガレットが撒かれ、食器台の上には桃色の飾り笠をつけた燭台が二つ立っていて、これまた珍しく緑色のお酒の入れられた切子の瓶が立って、それはお祝の鐘の鳴る小さい鐘楼のようでした。真中の所に私の椅子がおいてあって、其処に贈物が積んでありました。この頃みんなでして遊ぶダイヤモンドゲームを太郎から。面白い染の袋があって、その上の箱を開けたら、内から気の利いた切符入れと、綺麗な羽織の紐と、からたちの模様のテーブル・センター。さらにいじらしいことには、小さい小さいのし紙を胸に下げて、そこに「アッコオバチャン」「ヤスコ」と書いた一寸ほどのもんぺをはいたコケシ人形が現れました。そのコケシの後つきは全く泰子そっくりで、可愛いこともかわいいし、第一こんなに自分は何一つしないで、飾ったテーブルに座らせられると云うようなことは初めてだから、嬉しくて、少しひどくうれしくて、何となく涙が出たいようになり、でも、私が涙をこぼしたら、みんなはきっとそんなに私が喜ぶことをかえって気の毒に思うだろうと思って、あんまりうれしくて恥しい恥しいと云って気持を自分で持かえました。