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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

最後の級を卒業したようなものなのでしょう。

きのうはこちらの防空演習でした。診断書を出して、半病人としての参加でよいということになりました。が、あなたの昔のレインコートを直した上っぱりにもんぺ。靴ばきで鉄かぶとかぶって、それ空襲警報発令というと、庭の壕に入るの。そして、三回目の午後三時すぎには、隣組全部が一本の繩につらまって旗を先に立てて、類焼による仮定で、須藤公園の一寸した空き地へ避難しました。土の中というものは体にこたえますね。よく準備して冷えないよう理想的にいたしましたが、しんしんとした土のしめりと靴底の紙まがいのゴムからしみとおる冷えで、変になって、中途ですっかり着物を直して盲腸のときの腹帯をしました。

きょうはぐったりとなって、迚も朝のうち伺うという工合に行きませんでした。これで経験にもなったが頼りなさもひとしおよ。避難して来た何百人という顔ぶれを見て、殆ど女、子供です。役に立つ年齢の子供さえいません(学校だから)風向きについて落付いて考えられそうな人さえなくて。うちの組なんかつまりうちのものが主になってしまっている有様です。咲や何かが田舎に行けば、この組について誰が責任負うのでしょう。