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りそうのおんな
理想の女
豊島 与志雄
「新小説」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,162 字 · 77 页
私にうち明けられないことが……。」
私には彼女が何を云ってるのか見当がつかなかった。それで、自分の苦しんでいることと云えば、彼女もよく知ってる通り、どうして彼女と喧嘩ばかりしているか、どうしてこう反目し合うようになったのか、そればかりだと云った。これから先はうまくゆかないものか、どうしたら昔のような状態になれるか、そればかり考えてるんだと云った。自分の態度も悪い、然し彼女の態度にも悪い所がある、それをお互に矯正し合ってゆきたいものだと。
彼女は私の言葉を耳にも入れないかのように、書棚の方へ眼を外らしていたが、然し心では私の底意を窺っていたが、途中で俄に私の言葉を遮った。
「いいえ、そんなことではありません。」
「では何だい? お前が真剣に尋ねる以上、僕も真剣に真面目に、何でも本当のことを答える。うち明けて云ってごらん。」
「私が云い出さなければ、どこまでも隠し通してみようというつもりなんでしょう。でも私にはよく分っています。いくらごまかそうったって、ごまかせるものですか。」
「だから何のことだか云ってごらんと云ってるじゃないか。自分から押しかけてきといて……。