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りそうのおんな

理想の女

豊島 与志雄

「新小説」1920(大正9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,162 字 · 77 页

青空文庫

」という結論に達するのであった。

私は云った。

「ではお前は、僕とお前との愛について僕がどんなに苦しんでるか、それを少しも知らないのか。」

彼女は答えた。

「苦しんでは長谷川さんなんかの所へばかりいらっしゃるんでしょう。」

私はつと身を起した。長谷川の妹のことを、道子のことを、彼女は考えていたのだ。

「お前は道子さんのことを考えてるんだね!」と私は叫んだ。

「いいえ、道子さんとは限りません。」

「馬鹿なことを云うな!」私はそれを押っ被せて云った。そして、長谷川の家へ屡々行くのは、いつもいい意味の気分を与えられるからであること、道子さんに対しては嘗て愛を感じたこともないし、これからも愛を感ずる恐れは決してないこと、第一文学なんかをやろうという女と恋することは、自分のような寧ろ家庭的な男には適しないこと、自分が長く苦しんでいるのも、自分のうちに家庭的な気分が濃いからだということ、そんなことを考えると道子さんにどんな迷惑を及ぼすか分らないこと、などを私は急き込んで説き立てた。

「どうだか、今に分ることですわ。」と彼女は答えた。

私達は口を噤んだ。問題の中心にぶつかると、其処から先へは進めないで、未解決のまま止るの外はなかった。